チラシやパンフレットを印刷会社に頼もうとすると、「入稿」「校正」「校了」「アウトライン化」といった聞き慣れない言葉が出てきます。この記事では、入稿とは何かという基本から、入稿から納品までの流れ、データ形式の違い、入稿前に確認したいチェックリスト、よくあるトラブルと直し方までを、初めての方にも分かるようにやさしく解説します。
結論:入稿とは「印刷できる状態のデータを渡すこと」
入稿とは、印刷物のもとになるデータを、印刷会社に渡すことをいいます。もともとは出版の世界で、原稿を印刷所に入れることを指す言葉でした。今では、チラシやパンフレットのデータをWebでアップロードしたり、メールで送ったりすることも、まとめて「入稿」と呼んでいます。
ここで大切なのは、入稿するデータは「そのまま印刷できる状態」になっている必要があるということです。画面で見てきれいでも、サイズや色の設定、文字の扱いが印刷向けになっていないと、印刷会社から差し戻されたり、思っていたのと違う仕上がりになったりします。
この記事の要点
- 入稿は、印刷できる状態に整えたデータを印刷会社に渡すこと
- 校正は内容や色の確認、校了は「これで印刷してよい」という最終の了承
- データ形式はPDFが一般的。印刷会社の指定に合わせる
- サイズ・塗り足し・文字・画像・色の5つを入稿前に確認する
入稿から納品までの流れ(校正・校了・印刷)
入稿してから印刷物が届くまでは、一般的に次のような流れで進みます。
- 入稿:印刷用のデータを印刷会社に渡します。ネット印刷では、注文画面からデータをアップロードするのが一般的です。
- データチェック:印刷会社が、サイズや塗り足し、文字や画像に不備がないかを確認します。不備があれば連絡が来て、修正したデータを入稿し直します。
- 校正:印刷される内容を確認する工程です。画面で確認するものや、紙に出して色を確かめる色校正があります。
- 校了:内容に問題がないことを確認し、「これで印刷してください」と了承します。
- 印刷・加工:印刷し、決められたサイズに裁断します。折りや綴じがある場合は、その加工も行います。
- 納品:指定の場所に届けられます。
校正と校了の違い
校正は「確認して直す作業」、校了は「確認が終わり、印刷してよいと決めること」です。校了を出したあとに間違いが見つかっても、基本的には依頼した側の責任になります。校了の前には、日付や電話番号、料金など、間違えると困る情報をもう一度確認しましょう。
なお、印刷会社によっては「責了(責任校了)」という言葉が使われることもあります。これは、小さな修正が残っている状態で、その修正を印刷会社の責任で行うことを条件に校了とする、という意味です。
入稿データの形式(PDF・Illustrator・画像)
入稿できるデータの形式は、印刷会社によって異なります。主な形式と特徴は次のとおりです。
| 形式 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 多くの印刷会社が対応。見た目を固定したまま渡せる | 印刷用の設定で書き出す。フォントが埋め込まれているか確認 | |
| Illustrator形式 | デザインの現場で広く使われる。細かな調整に強い | 文字のアウトライン化や、画像の埋め込みが必要なことが多い |
| 画像形式(JPEG・PNGなど) | 写真1枚のような単純なデザインなら使える | 解像度とサイズに注意。文字が粗く見えることがある |
| Word・PowerPointなど | 対応している印刷会社もある | 環境によってレイアウトが崩れやすい。PDFにして入稿するのが無難 |
いちばん広く使われているのはPDF入稿です。PDFは、作ったソフトやパソコンの環境に関係なく、見た目をほぼそのまま相手に渡せます。ただし、画面用の設定で書き出したPDFは、画像の解像度が下がっていたり、色がRGBのままだったりすることがあります。印刷会社が推奨する書き出し設定があれば、それに合わせましょう。
入稿データのチェックリスト(サイズ・塗り足し・文字・画像)
入稿の前に、次の項目をひとつずつ確認しましょう。入稿データのチェックをしておくだけで、差し戻しや印刷のトラブルの多くを防げます。
- 仕上がりサイズは正しいか。A4なら210×297mm、B5なら182×257mmなど、注文するサイズと同じ大きさで作られているか確認します。
- 塗り足しは付いているか。背景や写真を端まで印刷する場合は、仕上がりサイズの外側に3mmずつ「塗り足し」を付けます。裁断のわずかなずれで、紙の白い部分が出るのを防ぐためです。
- 文字は端に寄りすぎていないか。文字やロゴなどの切れては困るものは、仕上がりの線から内側に3mm以上、できれば5mm程度離して配置します。
- フォントの問題はないか。文字がアウトライン化されているか、PDFにフォントが埋め込まれているかを確認します。
- 画像は埋め込まれているか。画像が別ファイルのままリンクされている場合は、埋め込むか、画像ファイルも一緒に入稿します。
- 画像の解像度は足りているか。実際に印刷する大きさで350dpi程度あるかを確認します。
- 色はCMYKになっているか。RGBのままだと、印刷時に色が変わることがあります。
- 細すぎる線はないか。極端に細い線は、印刷するとかすれたり消えたりすることがあります。
塗り足しと、裁断の目印になる「トンボ」については、塗り足しとトンボの基本で詳しく解説しています。
アウトライン化とは:文字化けを防ぐ処理
アウトライン化とは、デザインソフトの中の文字を、文字としての情報ではなく「図形」に変換する処理のことです。
デザインデータの中の文字は、パソコンに入っているフォントを使って表示されています。入稿先のパソコンに同じフォントが入っていないと、別のフォントに置きかわったり、文字化けしたりしてしまいます。文字を図形に変えておけば、どんな環境でも同じ見た目で表示できます。
ただし、アウトライン化した文字は、あとから文章を直すことができません。アウトライン化する前の元データは、必ず別に保存しておきましょう。PDFで入稿する場合は、アウトライン化の代わりに、フォントをPDFに埋め込む方法が使われることが一般的です。
画像の埋め込みとリンク
デザインソフトでは、写真などの画像を「リンク」で配置する方法と、「埋め込み」で配置する方法があります。リンクは、画像ファイルの場所を参照して表示しているだけなので、デザインデータだけを渡すと、相手の環境では画像が表示されません。入稿のときは、画像を埋め込むか、リンクしている画像ファイルをすべて一緒に渡す必要があります。
よくある入稿トラブルと直し方
入稿でよく起きるトラブルと、その直し方をまとめました。
| トラブル | 主な原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 端に白いすき間が出た | 塗り足しがない | 背景や写真を仕上がりの外側3mmまで伸ばす |
| 文字が切れた | 文字が仕上がりの端に近すぎる | 文字を内側に移動する |
| 文字が別の書体になった | フォントが埋め込まれていない | アウトライン化、またはフォントを埋め込んだPDFにする |
| 写真がぼやけた | 解像度が足りない | 元の大きな写真に差しかえる |
| 色がくすんだ | RGBのまま入稿した | CMYKに変換し、色を調整する |
| 画像が表示されない | リンク画像を渡していない | 画像を埋め込むか、画像ファイルも一緒に渡す |
| 白い文字や図形が消えた | 白に「重ねて印刷する」設定が付いている | その設定を外す |
色の違いについては、CMYKとRGBの違いで詳しく紹介しています。トラブルが起きたときは、慌てずに印刷会社からの連絡内容を確認し、どこを直せばよいかを一つずつ確かめましょう。
入稿できるデータ形式や推奨する設定、塗り足しの幅などは、印刷会社によって異なる場合があります。入稿前に、利用する印刷会社の入稿ガイドを必ず確認してください。
入稿のスケジュールと締め切りの考え方
入稿でもうひとつ気をつけたいのが、スケジュールです。ネット印刷では、「その日の何時までに入稿とデータチェックが完了したものを、何営業日後に出荷する」という形で納期が決まっていることが多くあります。締め切りの時刻を過ぎると、出荷が1日ずれるのが一般的です。
また、納期の数え方は「営業日」であることがほとんどです。土日や祝日、年末年始の休業日は数えないため、連休をはさむと思ったより届くのが遅くなります。
初めての入稿では、データの不備で差し戻しが入ることも珍しくありません。配布日やイベントの日から逆算し、差し戻しがあっても間に合うように、少なくとも1〜2日は余裕を持って入稿するのがおすすめです。入稿したデータのファイル名に日付を入れておくと、修正版と取り違える心配も減らせます。
デザイナーに頼めば入稿も任せられる
ここまでの内容を見て、「自分で全部そろえるのは難しそう」と感じた方も多いと思います。入稿データの作成は、印刷の知識が必要な作業です。デザインから印刷までまとめて頼めるデザイナーに依頼すれば、入稿データの作成や印刷会社とのやり取りも任せられます。
任せるときも、校了の判断だけは依頼する側の大事な役目です。日付や価格、電話番号など、事実に関わる情報は、最後に自分の目でも確認しましょう。
反響堂では、デザイナー歴22年の個人デザイナーが、印刷を前提にした入稿データまで作成します。デザイン料は税込でA4片面15,000円から、修正は同じ企画の範囲なら回数無制限です。印刷込みの場合、A4片面1,000部で19,500円(標準納期・コート90kg・送料込み、時期により変動する目安)です。ほかの条件は料金シミュレーターで確認できます。入稿データの不安も、LINEでお気軽にご相談ください。
よくある質問
入稿とはどういう意味ですか?
入稿とは、印刷物のもとになるデータを印刷会社に渡すことです。Webでのアップロードやメールでの送付も含めて入稿と呼びます。渡すデータは、サイズや塗り足し、色、文字の扱いが印刷向けに整った、そのまま印刷できる状態になっている必要があります。
校正と校了の違いは何ですか?
校正は、印刷される内容や色を確認して直す作業です。校了は、確認が終わり「これで印刷してよい」と了承することです。校了後に見つかった間違いは、基本的に依頼した側の責任になるため、校了の前に日付や電話番号などを必ず確認しましょう。
アウトライン化とは何ですか?
デザインデータの中の文字を、文字の情報ではなく図形に変換する処理です。入稿先の環境に同じフォントがなくても、文字化けや書体の置きかわりを防げます。変換後は文章を直せなくなるため、変換前の元データは必ず別に保存しておきましょう。